できない経営者の思考回路①

2023/09/08 09:09

会社の現預金残高が急激に減少している。　　４月末に６億円あった現預金残高（定期預金はゼロ）が８月末に３億円になっていた。

この期間在庫は増えておらず、大きなプロジェクトもなかったので先行する支払いはない。　また、コロナ融資の返済も８月に第１回目が始まったばかりの状況なので、資金が大きく減少する要因はまったく見当たらない。

社内で公表されている貸借対照表からしか判断できないが、繰越利益剰余金の取り崩し額（赤字）が7500万円あったので、儲かっていないことだけは確かである。（何故か損益計算書は公表されていないので見ることができない。）

年間売上げが40億円～45億円でここ数年推移しているので、月平均の売上はだいたい3億2000万円～4億円弱といったところになる。　たった2か月の間にほぼ1か月分の売り上げに相当する金額が減るというのは異常事態としか言いようがない。

あと在庫について言えば、常時平均して2億円前後だったものが、社長が代わった前期に4億5000万円になり、ついに今期は7億4000万円まで増えている。（但し、4月末→６月末の期間は在庫は横這いで増えていないので今回の現預金減少の直接的要因になっていない。）

ただ、商品売上げは年間40億円の総売上のうち13億円程度を占めているに過ぎず、その他の２７億円は商品とは関係のない維持管理費や工事売上である。　つまり年商１３億円の商品売上に対し、在庫が既に５０％を超えているのである。

昨年から在庫を積極的に積み増している理由は、昨年までコロナ渦とウクライナ戦争、米中対立等の要因等により世界の物流が停滞し、商品が入ってこなくなったというのが会社側の主張である。

しかしながら、商品売上自体はこの5年間くらい、緩やかに下がってきており、強気になれる要素はまったくない。　逆に、商品ラインアップが増えてきたことで、ますます在庫が積みあがっていく要素の方が大きい。

もちろん、担当者も社長や役員の了解の下に仕入れを実行しているのであるが、年商の半分以上というのはさすがにやり過ぎではないか？　

会社が公表している貸借対照表にいろいろな経営指標が記載されているが、現金がぐっと減って商品在庫がどんと増えた流動資産を優良な資産に変わったとでも考えているのだろうか？　こんな流動資産を流動負債で割った流動比率が良好な数字になっていると説明していたが、中身はまったく違うものであり、リスクの塊としか思えない。

結局、流動負債である短期借入金も一旦返済してからの借り換えもせず借りっぱなしにしており、長期借入金も設備投資資金ではなく、運転資金借入れになっており、短期も長期も借入金はすべて足元の運転資金に使われているに過ぎない。　

つまり売上が成長していない時期に運転資金が必要な状況は、ここ数年の間、単純に儲かっていない（＝利益率が低下している、あるいは既に赤字）ということ以外の何物でもない。

あと、2025年に3億円の一括返済が待っているので、返済後に借入れが出来るとしても、借入枠の５億円のうち、一括返済用の３億円を除けば、現在２億円の借入れ余力しかないことになる。　

5年前の決算書が、売上は40億円で税引き後当期利益は1億2000万円となっていたが、今期はほぼ同じ売上でも、当期利益の予想は2000万円しかない。　

これから資金が抜けている原因もわからないまま、さらに利益的に厳しい状況が続けば、２億円の借入れ余力なんてすぐに使い切ってしまう可能性が高い。

利益（率も）が下がって、在庫が増えれば現預金が減るのは当たり前だが、売上が先細りになる見込みの中、理解しがたい経営戦略を取っている。

まとまった金額の借入ができる銀行が１行しかないので、銀行の融資姿勢に変更があると会社はひとたまりもない。

この会社の社長と役員全員が財務諸表も読めず資金繰りの経験もないというのは、ある意味幸せである。

毎日会議ばかりして、日々なんの不安もなく経営ごっこができるのだから。

2年後にこの会社が生き残っていれば、完全に「運」のお陰としか言いようがない。

♪Those who speak know nothing

調子よく喋る奴に限って、（勝負の本質を）何もわかっていないんだ